公務員が不動産投資をするに当たって、兼業規定をしっかりと抑えておかないと、懲戒処分の対象になります。
国家公務員の兼業規定になりますが、地方公務員も準じていると思います。
公務員でも兼業が認められる
国家公務員は、基本的には、自ら営利企業を営むこと(自営)ができないとされていますが、承認を受けた場合には自営としての兼業が認められます。
憲法で保障されている相続権や財産権を制約しないためです。
① 職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
② 前項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。国家公務員法第103条(私企業からの隔離)
公務員が不動産投資するに当たって兼業の承認が不要な場合
人事院規則の運用において、不動産が5棟以上または10室以上、あるいは家賃が500万円以上あると、不動産の賃貸の経営は自営に該当すると記載されています。
逆に言うと、5棟・10室未満、500万円未満は、そもそも自営に該当しません。
したがって、兼業の承認も不要ということになります。
公務員の中には、すべからく承認を受けないと不動産投資をすることができないと思い込んで、不動産投資をしない人もいるので、もったいないです。
第1項関係
4 前項の場合における次の各号に掲げる事業の経営が当該各号に定める場合に該当するときは、当該事業の経営を自営に当たるものとして取り扱うものとする。
一 (省略)
二 不動産又は駐車場の賃貸 次のいずれかに該当する場合
(1)不動産の賃貸が次のいずれかに該当する場合
イ 独立家屋の賃貸については、独立家屋の数が5棟以上であること。
ロ 独立家屋以外の建物の賃貸については、貸与することができる独立的に区画された一の部分の数が10室以上であること。
ハ~ホ (省略)
(2)(省略)
(3)不動産又は駐車場の賃貸に係る賃貸料収入の額(これらを併せて行つている場合には、これらの賃貸に係る賃貸料収入の額の合計額)が年額500万円以上である場合
(4)(省略)
三 (省略)人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について
5棟・10室以上、500万円以上でも、公務員が不動産投資できる場合
5棟・10室以上、500万円以上で自営に該当しても、国家公務員法103条②で承認を得た場合には、自営をすることができると規定されていましたが、具体的には、どういった場合に承認を受けることができるのでしょうか。
人事院規則では、利害関係がなく、職務の遂行に支障がないと認められる場合であって、人事院が定める場合に承認することができるとされています。
1 職員が営利企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね又は自ら営利企業を営むこと(以下「役員兼業等」という。)については、人事院又は次項の規定により委任を受けた者は、その職員の占めている官職と当該営利企業との間に特別な利害関係又はその発生のおそれがなく、かつ、営利企業に従事しても職務の遂行に支障がないと認められる場合であって法の精神に反しないと認められる場合として人事院が定める場合のほかは、法第百三条第二項の規定により、これを承認することができない。
人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)
人事院規則の運用で、「人事院が定める場合」というのは、不動産の賃貸ではどういった場合かについて書いています。
賃貸との間に利害関係がなく、管理業務を管理会社に委託することを求めています。
第1項関係
5 「人事院が定める場合」は、次に掲げる場合とする。
一 不動産又は駐車場の賃貸に係る自営を行う場合で、次に掲げる基準のいずれにも適合すると認められるとき。
(1) 職員の官職と承認に係る不動産又は駐車場の賃貸との間に特別な利害関係又はその発生のおそれがないこと。
(2) 入居者の募集、賃貸料の集金、不動産の維持管理等の不動産又は駐車場の賃貸に係る管理業務を事業者に委ねること等により職員の職務の遂行に支障が生じないことが明らかであること。
(3) その他公務の公正性及び信頼性の確保に支障が生じないこと。
二~三 (省略)人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について
つまり、5棟・10室以上、500万円以上であっても、規定上は、賃貸との間に利害関係がなく、管理業務を管理会社に委託していれば、承認を受けることができ、不動産投資を行うことが可能になります。
税務署の職員ですと、自分が勤務している税務署の管内にある不動産を賃貸していると、利害関係があるものとされ、承認されないケースがあるとのことです。
地方公務員ですと、都道府県、市区町村等のエリアをまたぐ異動がないので、わかりやすいです。
相続を受けた不動産の賃貸は認められるようなことを聞きますが、人事院規則の運用には、記載されていません。
不動産の賃貸以外の事業においては、「人事院が定める場合」の基準として相続で家業を継承したことが含まれていますが、不動産の賃貸にはありません。
私は、不動産投資の規模を拡大する前に公務員を辞めて、承認を受けることはしませんでした。
そして、申請時に登記簿・図面、賃貸借契約書、管理委託契約書等を添付する必要があり、職場に言うのも嫌でしたので、5棟・10室、500万円のタイミングで辞めました。
申請は不動産を買う前に行うことになりますので注意してください。